囚人13号

野良犬の囚人13号のレビュー・感想・評価

野良犬(1949年製作の映画)
4.0
シムノンのファンであったという黒澤は明らかに当時のハードボイルド刑事ものに触発されているが、彼は裏社会/闇市としてファム・ファタールのような踊り子も登場させ、彼女の職場「ブルーバード座」の際どい描写もどこかフレンチノワール的で官能的。
拳銃をすられた新米刑事がそれを追っていくうちに自分の銃を使用した強盗殺人事件に直面して苦悩する姿、そして彼と組むが年の功で事件を洗っていく古株刑事との対比がまた渋い。

潜入捜査シーンも実際の闇市で撮影したらしく、かなり危険な場所のため三船敏郎の代役で後に『ゴジラ』を撮った本多猪四郎が演じているなんて逸話は興味だけだが、確実に戦争の残響が見いだせるネオレアリズモ。
「ホシ(容疑者)は?」「今日は曇ってるから出ないよ」など頓智の効いたやりとりは従来の黒澤映画には見られなかった気の利いたもので、やはり小説から派生させるとこうなるのかと面白い発見もある。黒澤映画の特色である悪天候も特に力が入っていたし、感情爆発も『蜘蛛巣城』みたく照明でわざとらしく強調されていないので不自然さが少ない。
囚人13号

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