未島夏

野良犬の未島夏のレビュー・感想・評価

野良犬(1949年製作の映画)
3.8
一体何故刑事になれたのか疑問な程に直情的な主人公の村上が事態を「実直」という力業で動かし、それをベテラン刑事の佐藤が知識と経験と温情で支える。

奪われた拳銃による事件が進展するに連れ自責の念を募らせる村上を、上下関係における厳しくも優しい様々な交流が支え、ようやく犯人へと近づく。

犯人へ接触する際の豪雨による悪い予感への煽りが、スリルや不安に満ちていて素晴らしい。
雨音の凄まじさやそれに掻き消される声、混乱に生じる予測外の行動が状況を少しずつ悪化させる様子、その一挙手一投足に圧倒される。
ト書きを極限まで活かした演出の極み。

事件の顛末に見い出す刑事と犯人の心理的対峙と、刑事としての行く末を示す佐藤の激励。
村上の「実直」は刑事として何処へ行き着くのか、その先へ思い馳せる様な最後。
未島夏

未島夏