ケンヤム

野良犬のケンヤムのレビュー・感想・評価

野良犬(1949年製作の映画)
4.6
戦後の秩序の乱れた日本において、善悪の境目をはっきりさせるということは待った無しの課題だったのだとこの映画を見て痛感した。
黒澤明が善悪の二元論から生涯抜け出せなかったのも、戦後の秩序の乱れた日本を見てしまったからなのではないか。

三船が復員兵になりすまして、闇市を歩くあの一連のシークエンス。
戦後の無秩序をあのシークエンスがむき出しにする。
三船の野良犬の様な目。
戦後の無秩序な社会では皆野良犬だった。

ただ、彼らは野良犬のままでいるか、それともそこから脱するか選ぶことができた。
という正論を黒澤明はむき出しに表現する。
だからこそ黒澤明は黒澤明なのだと思う。

戦後の無秩序な社会において、善悪の境目を考えるということは重要だったと思う。
そんな時代に、戦後の無秩序を丸々フィルムに焼き付けた黒澤明はやっぱり偉い。
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