一人旅

十月の一人旅のレビュー・感想・評価

十月(1928年製作の映画)
4.0
セルゲイ・M・エイゼンシュテイン&グリゴリー・アレクサンドロフ監督作。

ロシア革命の経緯を克明に描いたサイレント映画。
映像の力強さが圧巻で、モンタージュ理論に基づいた細かいカット割りが作品に緊張感を生んでいる。帝国時代の皇帝の像が民衆によって引き倒されるショットに続いて映し出される個々の人間の笑顔のクローズアップ。臨時政府が戦争継続を決定した直後に映し出される、民衆が飢えに苦しむ姿。政府の政策に対しデモを行う群衆に向かって銃撃を開始する兵士と、その光景を見て満面の笑みを浮かべるブルジョワ市民たち。外形的な歴史的事実がもたらした意味を、民衆の個々の表情だけで観ている側に悟らせる演出がとにかく素晴らしい。ソ連政府からの依頼で製作された作品なので、ブルジョワに対する姿勢は非常に否定的。強烈だったのは、地面にうずくまる一人の労働者をブルジョワの婦人たちが一斉に日傘で刺すという描写だ。
今回鑑賞したのはサウンド版だったが、劇中使用される音楽も映像同様に力強いし、緊迫感に満ちた当時のロシア国内の情勢に良く合っている。
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