垂直落下式サミング

エイリアンVS. プレデターの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

エイリアンVS. プレデター(2004年製作の映画)
4.2
二大SFモンスター夢の対決。遺跡調査チームが南極の地下遺跡の発掘探査に向かうが、そこには宇宙怪獣エイリアンが眠っていた。さらにプレデターも現れ、調査隊員たちは怪物たちの激しい死闘に巻き込まれてゆく。
監督は『モータルコンバット』『バイオハザード』で手堅い手腕を発揮したポール・W・S・アンダーソン。現在は俺の嫁映画を作り続ける世界的リア充ヲタと化した彼だが、どの作品からも映画製作に対する並々ならぬ熱意と無邪気な姿勢が感じられ、真っ当なサービス精神に満ち満ちているのが好印象。本作も例によって人間描写はくそくらえだが、フェティッシュなギミックにこだわるゲーム系職人監督ここにありといった風格を漂わせる。
二大怪獣の接点は、『プレデター2』で宇宙船の中にエイリアンの骨の剥製が飾ってあるオマージュシーンにはじまり、アメコミ、ゲームを経てようやく映画化。企画先行型映画なのでストーリーなど重要ではないのだが、別々の映画を衝突させるVSモノ企画はどうにも不安だ。下手な人がやると両方のファンを蔑ろにしかねない。しかしながら、いざ観てみるとなかなかどうしていいドリームマッチだったと思う。同一の世界観に二大スターを共存させ、両者の面子を立てながらも一本の映画としてリアリティラインは崩さない見事なバランスが保たれていた。
古代遺跡調査隊の学者たちが二大モンスターの襲撃に逃げ惑う。狂気の山脈にて。南極の地底に埋もれたピラミッド遺跡は若いプレデターたちが大人として生まれ変わるための通過儀礼を行う施設で、苗床となる生け贄を用意し繁殖させた最強生物エイリアンを狩ることが彼等にとってのイニシエーションなのである。なんかカッコイイ。プレデター社会では、倒したエイリアンの体液で自身の仮面と顔に「イ」の文字みたいな形の傷を付けると一人前として認められるようだ。なんと!シュワちゃんと戦ったプレデターは成人していなかったのか!?ヤバイな!
数万年前、古代人類に神として文明と英知をもたらしたのが、宇宙の狩人プレデターだったのだという衝撃の事実が明かされる展開は、U.M.A情報通の方ならニヤリとするところだろう。本作のプレデターの設定には、トゥクルフ神話に代表されるような、「かつて地球は宇宙から飛来した生命体によって支配されていた」といった内容の都市伝説のディティールが取り入れられていて、ピラミッド最上部に立つ天来人に古代人がひれ伏すシーンは『ビートたけしのテレビタックル!U.F.Oスペシャル』にイメージ映像として使用されていた。あれは矢追純一先生と大槻義彦教授が現役の頃だったか…懐かしい。
山口敏太郎さんをはじめ昨今のU.M.A論者に足らないものは、胡散臭かろうが何だろうが「宇宙人はいる!」と主張し続ける鉄の意思だ。超上現象肯定派は「今からみなさんにお見せするのは貴重な資料ですよ。これは、私の金星人の友人が提供してくれた彼の故郷を撮した写真なんですが…」と、このくらいのトンデモ話を真顔で切り出してこそだろう。最近の『やりすぎ都市伝説』のような勿体ぶった辻褄合わせや、一歩引いた物理的客観視点はまったくもって不要である。月の裏側には古代都市があるし、火星にはモノリスが建っているのだ。だって宇宙人の友人から聞いたなら仕方ないじゃないか。
ここで一旦はなしを戻しまして…、この後に観た『プロメテウス』の異星人が原始の地球に生命の種を撒くシーンには笑ってしまった。「プレデターが人間に文明を与えた神なら、地球に命の炎を灯しエイリアンをも創造したのは俺の考えたエンジニアなんだもんね」という大人げないリドリー・スコットの現役性に安心させられる。