イワシ

暗い鏡のイワシのレビュー・感想・評価

暗い鏡(1946年製作の映画)
5.0
ニューロティック・スリラーの傑作。オリヴィア・デ・ハヴィランドが双子の姉妹を二役演じてるのだが、特殊撮影によって同一画面に姉妹の顔が写るショットに不自然さがまったくないのが凄い。姉妹の人格は遠心分離機で分けられたかのように、きっちり善と悪に二分されているのだが、それだけに悪側のもう片方への精神支配が恐ろしい。妹の姉に対する精神支配が強まるきっかけとなる寝室で突然閃光が飛ぶシーンがとんでもなく怖い。超常の力が働いたのかと思うような閃光を捉えた瞬間のインパクトと、姉の精神を毒で弱らせるかのような妹の話術のネチネチ感に、狂気が充満していく様子を見てしまう。クライマックスはヒッチコック『サイコ』の先取りのようでもあるのだが、アンソニー・パーキンスの人格が母親に上書きされ、支配が完成する『サイコ』とはまた異なり、『暗い鏡』では善悪が渾然一体に混ざり合い、人格の区別がつかないという異質の恐怖が描写されていた。

人間の善悪が人格ごと分離している『暗い鏡』を観ていると、他の双子を扱ったどんな映画よりも、『スーパーマンⅢ/電子の要塞』を思い出してしまう。
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