新珠三千代没後20年記念@ヴェーラ
観るたびに、井手俊郎の脚本の、あまりの見事さにため息が出る。
人員も職業もあり方もまったくちがう4つの家族を同時に描いて、混乱なく、すんなりと理解させてくれる。
まさに天才的な職人ワザの脚本だと思う。
小田急線梅が丘につくったというオープンセットも素晴らしい。
駅は西武線の井荻だが、見事な編集で、違和感ゼロ。
(ただし、よく観ると、時折映る電車が、まったくちがう)
轟夕起子が、大太りする直前で、若さが残っている。
高田敏江と大森暁美が女子高生役で出てくるのもうれしい。
わたしが生まれる数年前の映画で、わたしの子ども時代、まだ、このような雰囲気が残っていた。
さすがに洗濯は井戸ではなくなっていたが、手漕ぎ井戸だった。
家庭内の娯楽はラジオのみで、「テレビなんか、そば屋に行って観ればいいじゃない」との轟のセリフに真実味がある。
明日はきっと、もっとよくなるから、もう少し頑張ろうと、みんなの気持ちがひとつだった時代を象徴する、群像ホームドラマの超傑作。