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サムシング・ワイルドのmasayaanのレビュー・感想・評価

サムシング・ワイルド(1986年製作の映画)
3.5
どこかの「ロードムービー名作選」で見かけてクリップしておいたのを思い出し、レンタルにて鑑賞。人生を軌道に乗せ終えて、あとは来週から副社長に昇進するのを待つのみ、という中年の男は、自らの保守的で健康な人生に退屈しつつもそれを手放すことができずにいて、チマチマと無銭飲食だの万引きだのをしては「俺はけっこう、反抗的な男なんだぜ」と自らを慰めている。

ある日、そんな男の「現場」を押さえたのは、掴みどころのないミステリアスな女だった。誘われるがままに彼女の車に乗り込み、次第に彼女のペースにはまっていくが・・・的なのがスジ。とは言え、こうして整理できるのはすべてを見終わったからであって、開始数分ですべての段取りが整ってしまうので、「いやいや、ないだろコレ」と誰しもが思う筈ですが、そのツッコミを初めて入れるのが、後半に登場する悪い男というのが面白かった。

思ったのは、ロードムービーというのは本質的にそういうものなのかもしれないけど、「旅」を終えた彼ら・彼女らは、まったく「成長」などしないわけです。「啓示は路上に」というのも、ビート小説が書いた嘘っぱちであり、彼ら・彼女らは「旅」から何をも持ち帰ることができない。あるとすれば、ちょっとした「変身」であり、それすら錯覚であるなら、文字通り彼ら・彼女らは「移動」したに過ぎない。

しかしそれを、虚無的には描かず、かと言って開き直って肯定することもせず、「好い加減に」描いている。80年代の空気というのはこういうものだったのかもな~と思いました。そして、より興味深かったのは、「人生」が変わったところで、「人間」はそう簡単には変わらない、ということ。それを希望として語って見せる図々しさには、しかしこの映画の魅力が詰まっている。トニー・スコットとタランティーノによる『トゥルー・ロマンス』へと続く轍がくっきりと見える佳作。