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都会のアリスのericoのレビュー・感想・評価

都会のアリス(1973年製作の映画)
4.0
ニューヨークで自分を見失ってしまったジャーナリストが、偶然出会った少女とアムステルダム、そしてドイツを旅することになる。ヴェンダースのロードムービー3部作の1作目。
ロードムービーの関心は、私たちから「日常」という環境の要素を取り去ったあとに残るものにあると思う。本当は「日常」すら不変ではなく、つねに何かが加わりまた何かが失われていくものだけれど、そのスピードを猛烈に早めたものが「旅」であるのだろう。
子どもたちは、無自覚に日常に凭れかかる大人とは違う。大人の旅が、日常が失われたことへの戸惑いから始まるのに対して、子どもたちはその一歩先で、新しい世界への驚きに目を輝かせる。
フィリップが、ポラロイドカメラで撮ったものが写真になるころには既に過去になっている、とこぼすとき、彼はまだ「日常は不変である」という世界観から脱出できていないのだけれど、アリスとともに旅をするうちに、ようやく写真の呪縛から解放される。「日常」はどんどん変わっていき、今は過去になっていく。逆説的だが、そのことを受け容れてはじめて、「今」を慈しむことが出来るようになるのかも知れない。
アリスの小生意気な目にきゅんとしてしまう。あの子、今頃どんな大人になってるんだろう…(93年の「時の翼にのって」に出てるらしい!)
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