さすらいの旅人

インファナル・アフェアのさすらいの旅人のレビュー・感想・評価

インファナル・アフェア(2002年製作の映画)
4.2
真空管オーディオは両者を結ぶ安らぎの音。CATV/ムービープラス・オンデマンド視聴。

これは面白い。
有名作品であるが未見だったため、遅ればせながら鑑賞。
警察とマフィアに長年に渡り送り込まれた潜入者、ラウとヤンの物語。
ストーリーの組み立て方が秀逸で、緊張感が途切れることなく、二転三転のスリリングな展開に圧倒される。

潜入先での個々の苦悩と生き方、両者が同じ事件で巡り合う数奇的な運命、両者の対決の悲しさなど繊細に描く。両者が気を抜ける安住の場所は、ラウは家庭の妻、ヤンは精神科の女医だ。この気を抜ける温かいシーンは、緊張が続くドラマの唯一のオアシスで私は好きだ。

主演のアンディー・ラウとトニー・レオンがいい。哀愁を帯びた男を演じさせたら右に出る者はいないだろう。ラストのビルの上での対決は絵になる名シーンだ。
警察のウォン警視役のアンソニー・ウォンもヨーロッパ的顔立ちで個人的に好きだ。イタリアの名優リノ・バンチュラを何故か思い出してしまった(笑)。精神科女医役のケリー・チャンも人物から出る優しさが好きだ。彼女が涙を流すシーンは胸が痛い。

本作は物語の設定の面白さで、ハリウッドリメイクや日本のテレビドラマでも製作されている。映画は予算や俳優も重要だが、最後はシナリオで決まることを証明した映画と私は思う。
あと、本作はフィルムで撮影されているが、粗い画面と全体を覆うブルーの色彩が懐かしく、デジタルにはない感覚を思い出させた。