通りすがりのナポリタン

真夜中のカーボーイの通りすがりのナポリタンのレビュー・感想・評価

真夜中のカーボーイ(1969年製作の映画)
4.2
私の好きなバンド、筋肉少女帯の曲である「サボテンとバントライン」にこの映画の歌詞が出ていたのをずっと気になっていたので鑑賞!なんだこの映画を通して感じる虚しさと切なさは!

テキサス州に住むカウボーイスタイルのジョー(ジョン・ヴォイド)は自分の魅力を武器にし、金持ちの熟女へと自分の身体を売り生活する為一攫千金を夢みながらニューヨークへと移る。しかし、ニューヨークでは女性は自分を見向きもせず通りすぎ、仕舞いにはやっと捕まえた女性に、事が済んだ後、金をせびると逆に金をせびられるという始末、そんな中訪れたバーではブロンクスから来たリッヅォ(ダスティン・ホフマン)通称ラッツォ(ネズ公)と呼ばれている足の悪い男と出会い意気投合するのだった・・・

冒頭からラストシーンまで辛い、一攫千金を夢みた若者が落ちぶれていく様がありありと見られる。60.70年代のアメリカンドリームとアメリカン・ニューシネマという当時新しかっただろうと思われるジャンルに見事に入り込んだ代表作。過激なストーリーの中にある若者の夢を打ち砕こうとする無言の圧力が凄まじい。ストーリーは至ってシンプルで大きな事件に巻き込まれたりはしない、しかし死と隣り合わせなのがヒシヒシと伝わってきた。また、ジョーとリッヅォの奇妙にも見える友情がこの映画の特徴で田舎から来た若者と都会を知り尽くした若者が出会い、お互いを支え合いながら迎えるラストシーンは心の中が切なさと虚しさでいっぱいになる。ジョーの優しさとリッヅォのジョーになら自分の夢を託せるだろうと思えるほどの切ない友情が良かった。60年代とは思えないほどの今見ても新しいアーティスティックな映像も素晴らしかった!

ジョー役のジョン・ヴォイドのトラウマと戦いながらも現実を生きるリアルな演技が素晴らしい!そりゃ、小さい頃からかっこいいかっこいい言われてたら自分にめちゃくちゃ自信ついちゃうよ・・・笑ナルシスト気味なのにどこか優しいお兄ちゃんなジョーは好きになっちゃうキャラクター!ずっと見てるとなんだか可愛く見えてくる笑そしてダスティン・ホフマン演じるリッヅォは盗みを働きながら生きる小悪党だが、どこか憎めない人間くさいキャラクターでこの映画の虚しさを強めていた。ジョーとリッヅォが迎えるラストシーンはたくさんある映画のラストシーンでも忘れられなくなる。

いっそ清々しいような虚しさが胸を打つ映画でした。ところで何で真夜中なのだろう??