Ryo

真夜中のカーボーイのRyoのレビュー・感想・評価

真夜中のカーボーイ(1969年製作の映画)
4.4
“I’m walking here. I’m walking here.”

テーマは「社会に対する疎外感」
これは「アメリカン・ニュー・シネマ」と称される作品群に共通している。今作も孤独が大きなテーマとなっている。さらになんの目的もなく何を糧に生きてるのかわからない男の物語。

背景に隠れたテーマとして愛される事よりも愛する事が大事だというテーマも含まれております。

夢追う者なら誰でも体験したことあるような理想と違う現実に打ちのめされる辛さ。それを描いてる。


夢を抱き自信に満ちた田舎者の主人公は男娼婦になるべくニューヨークに行くも理想郷とは裏腹に退廃した現実をつきつけられる。自信満々の男が次第に打ちのめされ萎縮して行く姿は当時の泥沼状態で披露した自国を象徴。それでもトラウマだらけの過去(カーボーイの服)を脱ぎ捨て新たな理想郷を目指すところに未来への強い希望を感じた。(引用Mikiyoshi1986)素晴らしいレビューだったので引用させていただきました。


ジョーは鏡を何度も覗き込む。そして語りかける。そこにだけ自分を拒絶しない世界があるからだ。主題歌の中に、「俺の心の声しか聞かない」という部分がある。鏡の中の自分だけに耳を傾けるのだ。

一方、ダスティン・ホフマン演じる「リコ(リゾ、ラッツォ)」はもっと悲惨だ。足を引きずり結核を持ち咳が止まらず、彼は人を騙したり、食べ物を盗んだりしてニューヨークの掃き溜めのようなところに住んでいる。おそらく女性も知らない。
そのリコにとって、ジョーの鏡に当たるものが、太陽だ。フロリダの太陽。彼はそれだけを夢に今を生きている。この映画は高速バスに始まり、高速バスに終わる。希望でいっぱいのジョン・ヴォイトがバスでニューヨークへ旅立つシーンに始まり、夢破れたジョン・ヴォイトがダスティン・ホフマンの夢を叶えてやるために、バスでマイアミへ向かうシーンに終わる。

ずっと孤独だった主人公は愛するもの守るべきもの(ラッツォ)に出会うことで孤独を抜け出し、現実を生きる事ができ、生きる目的を掴む。愛されることよりも愛する事が大事なのだ。

ーテーマ「孤独」ー
主人公ジョーには親はおらずおばあちゃんに育てられました。原作では風俗を経営するおばあちゃんの元娼婦に囲まれて育ったようです。おばあちゃんには家に一人にされることが多かったため孤独になり、西部劇と現実の区別がつかなくなりました。

ーフラッシュバックする過去の正体はー
原作の第1部の話をスキップしそれをフラッシュバックとして蘇ってるので見ただけではわかりません。
ラッツォに騙され行ったホテルではキリストの勧誘をされました。その時のフラッシュバックは水の中に無理やり入れられたがあれはキリスト教の儀式。そこで溺れトラウマを持ったためジョーは逃げました。
さらに恋人とセックスをするフラッシュバックも蘇りその中で主人公は特別だと何回も言われておりそれがジョーに自信を与えている。この恋人は町の男たちとヤリまくっていたが主人公に惚れ駆け落ちします。その後見つかり恋人もそして主人公自身も男たちにレイプされていたのだ。その後恋人は精神病院に搬送されさらに孤独になります。

ージョーはなぜカウボーイになったのか?ー
(真夜中のカウボーイとはスラングで娼婦の男版)
お婆ちゃんにも恋人とも親とも突き放された孤独な主人公は少年の頃救ってくれたカウボーイに自分自身がなりきりトラウマを克服しようと思いました。

ー原作のラストー
「ラッツォが死んだ後主人公はラッツォをずっと抱きしめた。ラッツォのためではない。これから一人で生きてくのが怖いからだ。」

ーラジオー
ジョン・ヴォイトが肌身離さず持ち歩くラジオ。あれは現代人にとってのケータイと一緒なのでは。最初に出会った中年男に看破されたように、ジョン・ヴォイトは孤独である。知り合いのいない大都会で、自分1人で虚勢を張って生きていかなければ。ピンと張り詰めた緊張の糸と、助けを求められない恐怖感と孤独感。ラジオから流れてくる人の声に耳を傾け現実から逃げていたのだ。

ー“I’m walking here. I’m walking here.” ー
「俺は生きているんだよ、ここで。お前らは俺のことを虫けらのように思っているかもしれないが、俺はここでちゃんと生きてるんだよ。」、そう叫んでいるように聞こえる。涙なしには見られない。

ー主題歌ー
ニルソンが歌う「Everybody’s talkin’」。歌詞を見てみると、全く主人公のジョーのことを歌っているとしか思えない。
Everybody’s talking at me 「誰もが俺に語りかける」
I don’t hear a word they’re saying 「でも一言も耳に入ってこない」
Only the echoes of my mind 「俺に聞こえるのは俺のこころの声だけさ」
I’m going 「俺は行くんだ」 
where the sun keeps shining 「いつも太陽が燦々と輝いているところへ」
Through the pouring rain  「この土砂降りの雨を通り抜けて」



主人公のジョンヴォイトはアンジェリーナジョリーの父親だそうです。
Ryo

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