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真夜中のカーボーイのamのレビュー・感想・評価

真夜中のカーボーイ(1969年製作の映画)
4.4
ひたすら暗くて、不憫で、辛気臭くて、けれど愛さずにいられない映画。

アメリカンドリームを掴もうと意気込んでやってきたニューヨーク。しかし現実は厳しく、仕事が得られず困窮していく一方。住む場所すら危うい中、冬は深まり、厳しい寒さに晒され、唯一の拠り処である相棒の病状は刻々と悪化していく……

もう どん底ofどん底。

主演二人の役への入り込み方が凄まじく、演技である事を忘れてしまうくらいジョーとリッツォの実在感があるから本当に見ていて辛い。
遂にあの後生大事に抱えていたラジオまで手放してしまうシーンなんか涙がちょちょぎれてしまう。(ここでリッツォがとぼけた感じで木琴を叩いてるのがより哀愁を誘う…)

けれど、どん底だからこそ、ジョーがリッツォに向ける感情が"愛"と呼べる域にまで変化する様子だったり、「俺たちは一心同体だと言ってやるさ」と言われた時のリッツォの表情だったり、スクリビッジ(単語ゲーム)を手解きしてくれるオネーサンの慈愛に満ちた眼差しだったり、ささやかな"救い"の場面がこの上なく胸に染みる。

ジョーが自分の着てるシャツの裾でリッツォの汗を拭いてあげるシーンが衝撃だった。
こういう同性同士の友情を超越した関係性やジョーのセクシュアリティの曖昧さに対する繊細(かつ踏み込んだ)な描き方については、原作者も監督もゲイだったという事を知ってかなり合点がいった。



笑ったのは、↑の優しいオネーサンとのベッドシーン。何のセリフも無くても一目で(勃たなかったのね……)と分かるジョーの表情がgood。
その後リベンジする時の「いざ雄の誇りを取り戻さん!」とばかりの勇ましいBGMも何あれ(笑)ムードもへったくれも無ぇ(笑)


ラスト、バスに揺られるジョーの 迷子の子供みたいな顔は一生忘れられないと思う。



(追記)
リッツォに情が湧きすぎちゃって、レビューの文面でも「ラッツォ(ネズ公)」と呼ぶのを憚ってしまう…
だって本人あんなに嫌がってたからさ…(涙)
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