TaiRa

死神の谷/死滅の谷のTaiRaのレビュー・感想・評価

死神の谷/死滅の谷(1921年製作の映画)
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大層な邦題付いてるけど中身はファンタジーラブストーリーだった。原題は「疲弊した死神」って意味らしい。

田舎の村に死神がやって来ます。婚約したてでアツアツなカップルの男の方を死神があの世へ連れて行ってしまったので(寿命だったそうです)、女の方は大変ショックを受けてしまいます。女は服毒自殺で死後の世界へ飛んで行き、死神に「ダーリンを返して!」と直談判するも返って来たのは「運命は変えられないんで」という事務的な返答。それに加えて「わしかてこんな仕事したないねん」と愚痴る死神さん。やはり死を看取る仕事は精神的に辛いものがあるようです。命の蝋燭が立ち並ぶ圧巻の光景を前に死神はある提案をします。今にも死にそうな三つの魂の中から一つでも救う事が出来たら恋人を返すと。女性は恋人の為に異なる時代、異なる国へ飛んで行き恋人の命を救う女に成り代わります。異なる時代や国に同じカップルが出て来る光景は『バンデットQ』みたいだなと。一つ目はバグダッド、二つ目はヴェニス、三つ目は中国での出来事。視覚効果を多用した演出やなんちゃって異国情緒を表現した衣装や美術が豪華で愉快。クライマックスで、代わりの命を差し出せば恋人を救えると知った女が浮浪者や老人に「あなたの命、私にください!」と迫っては秒で断られる展開が続き笑えます。ラストは切なくも良い話になっていて良かったですね。結果は逆ですが『風立ちぬ』みたいな最後です。ラングが監督する予定だった『カリガリ博士』との関連なんかも考えられる映画です。それに『第七の封印』などの死神映画への影響なんかも感じさせる映画でした。
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