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死神の谷/死滅の谷のTSのレビュー・感想・評価

死神の谷/死滅の谷(1921年製作の映画)
3.8
【幸福は永遠ではない】80点
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監督:フリッツ・ラング
製作国:ドイツ
ジャンル:ホラー
収録時間:114分
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名作『メトロポリス』の監督フリッツ・ラングが世に出した奇妙ながらも美しい作品。この時代の作品は表現主義が際立っている気がします。それもそのはずで、やはり音声を自由に出せない分、表情で喜怒哀楽をめいいっぱい表さないといけません。無表情ながらも全てを知り尽くしたかのような死神、悲しみでいっぱいの女性の対比が大変印象的でありました。監督の終生感も窺える一品であります。

幸せの絶頂に達していたある男性と女性。しかし、そこに死神が現れ男性の命を奪ってしまう。悲しみに明け暮れた女性は死神に男性を生き返らせてほしいと嘆願するが。。

ある講演で今でも印象に残っている話かあります。それは
「人というのは他人の幸福を100%共感できないものです。ましてや自分が不幸の時はなおさら。だから人と話す時、たまには自分の不幸だったことを話したりする方が聞き手にとっては安心することもあるのです。」
なるほど、たしかに人間はそれほど完璧には作られていません。例えば自分が失恋真っ最中の中、まわりがおめでたばかりだとしたら素直に喜べるのでしょうか。私も失恋したという一報がある方が仲間意識が芽生え安堵さえ感じるかもしれません。

今作でも絶頂の二人の前にに嫌がらせのように現れる死神は、そういう思いを具現化した存在のように見えました。そして女性に試練を与える死神。さまざまな時代に飛び、生かすべき命を救えたら男性を救ってやると。このシークエンスも面白く、中国の描き方は今でなら批判があると思いますが、当時の時代感がわかり興味深いです。凄いのはこれらの事象を字幕があるといえどほとんどを表情で表しているということ。言葉以上に、表情なのだなと感じました。

かなり古い映画なので、はじめてのクラシック映画がこれだとすると退屈と感じるかもしれません。しかし、これも一興。見ていても良いと思われます。