くりふ

美女と野獣 ディズニーデジタル3Dのくりふのレビュー・感想・評価

4.0
【愛の納期】

通常版は、公開時にワケあり美女との旅行先でみた、思い出深い作品(ふふ)。この3D版も劇場行きました。しかし隣には美女ではなく野…(フッ)。(当時)もう4年前になるのか…。

3D 化ではイントロの、階層化された背景画がより効果的だった以外、恩恵ってあまり感じず。CG化過渡期の作品であることがより目立ちましたね。しかし、劇場体験はよい思い出となりました。

新作ガンズ版にあわせ久しぶりに再見したら、やっぱり面白かった!…妙な力がこもっていて。楽曲には酔えますが映画としては意外と、ヘン。原作を強引にアレンジした上で、ディズニーテクでもって柔らかくねじ伏せているような、口当たりのよい歪さを感じます。

原作アレンジで一番強烈なのは、呪い解除に期限を設けたことかと。野獣となった王子が21歳になるまでに、愛し愛されるようにならぬと城の使用人含め、呪いは解けない。

これ、愛が自然発生しなければ開発しろってことですよね。ムチャにも思うが、ふと考えると示唆に富む呪いです(笑)。このおかげで、本作がより人間くさくなりました。嘘くさいファンタジーよりずっと面白い。

私がキャラで好きなのは使用人たち、特に時計と燭台です。この凸凹コンビは飴と鞭的性格ですが、前者は容赦なく時を刻み、後者は光で道を照らすという、呪いとの関連性で生まれたキャラでしょうね。

バカ殿の被害者である彼らは人間に戻りたい一心で、ベルが城に現れたら即、その想いが先に迸っちゃうのが可笑しい。愛の内訳は二の次ってのが本音なのでしょうね。

しかし使用人ズってとことんお人好しで…職業柄もあるのでしょうが、愛の開発者に成ろうとはせず、あくまでサポーターに徹するんですね。で、呪い解除より愛の行く末に夢中になってゆくやっぱりな人の良さ。結局、愛の成就は失敗か?? となる時の受け入れ方も、彼ららしいですね。

使用人ズ最大見せ場は「おもてなしミュージカル」ですが、その暴走っぷりがスゴイ。ベルの空腹を満たすのが目的なのに、久しぶりのおもてなし業に燃え上がり、手段が目的にすり替わる。結局、ベルは食べられたの? 画的に豪華絢爛(CGスキル)不足でも、笑いの立ち方で楽しめます。

肝心のベルが美女に見えないのは狙いですかね? ガストンの追っかけ巨乳三人娘の方が美人です。一番好きなのは元箒美女だけど。ベルは場面によって顔も等身も違いますが、少しでも複雑なキャラにしたかったのかな?

彼女、今の価値観だと腐女子だと思う。現実よりも空想好きで。18世紀当時のフランス識字率など踏まえても、本ばかり読んでる(読める)女って相当な変人ですよね。そのバックボーンのため、父親も変人発明家にしたのでしょう。

しかし広い世界に向け夢を歌い上げていた彼女、結局その次、そこに収まっちゃうのって、それでよかったのか?

野獣は物語中盤での、ベルとの決裂から急接近への心理ジャンプがとても好きです。あの死闘は、ヒロインをヒーローが救う、という型になっていますが、野獣は武器である牙と爪を使わないんですよね。

そのためあの結果となりますが、一方のベルは、何故そうしたかに気づいたのだと思います。この辺りはちょっと泣ける。ここまでの経緯は脚本的にしっかりしていると思います。

でも私的には、愛のピークはここで尽きました。その後はなんか、即席過ぎて惰性に感じる。

しかし理屈ではわかります。ベルは元々、変人ですからね。多分、異類婚姻譚なども喜んで読み、自分をヒロインに重ねるなど予習もできていたのでしょう。あと、比較対象がガストンしかなかったことも大きいのかな?

代わって立ち上がる面白さは、一番の変人は村人だった、という恐ろしさですね。…そもそもあいつら、魔法の鏡そのものになぜツッコミを入れぬ!見た目は一番変人だった野獣が、一番常人に見えてくるというオチにうまく、着地したと思います。

…思い入れある作品なので、色々書いてしまいました。まだ尽きませんが、このへんで終わります。改めて通してみると、欠点も色々あるけれど、(当時)最新の『アナ雪』より脚本も演出も、映画的面白さが詰まっていてずっといいですね。ディズニーにはこのレベルの次回作を期待したいです。

<2014.11.6記>
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