もるがな

スラムドッグ$ミリオネアのもるがなのレビュー・感想・評価

スラムドッグ$ミリオネア(2008年製作の映画)
4.5
驚異的な偶然に彩られた作品ながら、胸を打つのは、単なる奇跡の物語ではなく、決して無駄ではなかったと、ミリオネアを通じて今までの人生が一つ一つ肯定されていくシーンだろう。問題のほとんどは難解で、学のないジャマールが疑われるのも無理はないが、悲惨な半生の中にその答えは隠されており、普通の人なら横目に流してしまう風景の数々を、彼はきっと忘れることができない。そんな彼だからこそ、ここまで辿り着けたのだ。

ミリオネアとは一攫千金であり、兄であるサリームが追い求めた真理の一つである。金があれば、悲惨な人生にはなっておらず、金が運命を狂わせたといっても過言ではない。肌感覚で貧困を理解した人間なら、利根川に教えてもらわずとも、金の重みは痛いほど分かる。個人の努力など嵐の前のオールに過ぎず、むしろ運がよくないと抜け出せないシビアさこそが貧困の世界の本質なのだ。

この作品は夢の失われた西欧主義から見た憧れの投影でもあるのだが、ハードな現実と闇を描くことでバランスを取っている。人生に対する強烈な肯定の物語でもあり、至ってシンプルな愛と運命の物語でもあるのだ。
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