tak

スラムドッグ$ミリオネアのtakのレビュー・感想・評価

スラムドッグ$ミリオネア(2008年製作の映画)
4.0

 ダニー・ボイル監督が、インドを舞台にインド人キャストで撮った波瀾万丈の人間ドラマ。今や世界で一番の製作本数を誇るインド。ハリウッドならぬボリウッドという呼び名があるくらい。パワフルで、上映時間が長くって、ミュージカルシーンがお約束。それが僕のインド映画に対するイメージだった。この「スラムドッグ~」は、英国資本なんで純粋なインド映画とは言えないけど、インド映画のパワーを感じずにはいられない。

 貧民街出身の青年が、クイズ番組「ミリオネア」で最高額の賞金を得る1問前までたどり着く。しかし、不正を疑われて警察の取調べをうけることに。彼が語るこれまでの人生。それは、インドの厳しい現実の中で、彼が危険な目に遭いながらも懸命に生きてきた物語。タージマハルでインチキガイドで小銭を稼ぐ、悪いオトナに使われて街角で施しを受けて稼ぐ。
「本当のインドが見たけりゃこっちさ」
とは劇中の台詞だが、この映画自体が僕らにインドの現実を見せてくれる。

この映画を観た友人は、「貧困がこの世からなくならないのかな。」と、エンドロールを見ながらつぶやいた。確かにそうだ。ストーリーは面白いけど、観終わって残るビターな余韻は、(誇張はあるかもしれないけど)この映画が伝えるインドの現実と無縁ではない。

 そうした面はあるにせよ、この映画はよくできているし、楽しめる。初恋の人を救うために暗黒街に乗り込む、彼女が見ているかもしれない、という理由でクイズ番組に出演する、そんな一途な恋心。そして何よりも、出題されるクイズが彼のこれまで生きてきた道につながる展開の見事さ。最後の問題が読み上げられた時、「そうきたかぁ!」と嬉しくなった。

 10億もの人口を抱えるインド。日々困難な状況でも、懸命に生きている人がいる。そんなインドという舞台だったから、このハッピーエンドが活きた気がする。きっと先進国が舞台なら、単に都合のいい話でしかなかったと思える。そして、そのハッピーエンドを祝福するかのような、ラストのミュージカルシーン。様々な映画の魅力が詰め込まれたエンターテイメントとして、オスカーに輝いたのも理解できる。普遍的な成功ドラマを、斬新な切り口で示してくれたダニー・ボイル監督の挑戦に拍手を贈りたい。

試写会にて鑑賞。
tak

tak