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スラムドッグ$ミリオネアのJUNのレビュー・感想・評価

スラムドッグ$ミリオネア(2008年製作の映画)
3.9
2006年、ムンバイ。
彼はあと一問でミリオネアだ。
なぜ勝ち進むことができたか?

A: インチキした
B: ツイていた
C: 天才だった
D: 運命だった

私たちが最後まで見届けた時、この答えを知ることができます。

『ぼくと1ルピーの神様』原作、ダニー・ボイル監督作品。アカデミー賞で8冠に輝いたその実力。
名作だとは伺っていたのですが、お恥ずかしながら初鑑賞。1、2ヶ月ほど前に観たのですが、それでも覚えていられるというとは、やっぱりすごい映画だったんだな、と思います。

インド・ムンバイのスラム街で育ち、教育を受けてこなかった主人公が、皆さんご存知のクイズ番組「ミリオネア」で、正解していく。それはいかさまなのか、たまたま当たっているのか?それとも彼は天才なのか、運命がそうさせるのか。

ミリオネアの問題を通して、主人公・ジャマルが自分の人生を回想し、答えを導き出していきます。場面は、警察の取り調べ・番組・過去 と目まぐるしく変わるのに対し、非常にリズミカルで疾走感のある映像とテンポがクセになりました。
スラム街の実態を、ダニー・ボイル監督が斬新な手法で描いている本作は、クイズに正解できるかというハラハラ感と、一見なんてことは無いように進んでしまうスラム街の子供たちの息が詰まってしまうような日常、スラム街で生まれ育ちながらも、生き延び、大人になることができた彼らの現実的な選択、約束された未来の違い、それでも運命を信じた彼らの愛など、あまりに多くのことが詰まっていて、感情が大洪水を起こしてしまいます。

この映画には3人の重要人物がいます。主人公のジャマール、その兄のサリーム、ある日街で出会い行動を共にするようになった少女・ラティカ。冒頭から登場する『三銃士』がこの物語の鍵と言えるでしょう。読んだこともない『三銃士』に自分たちを擬えて、三人で懸命に生きていく。しかし、徐々にそれぞれが選ぶ道は異なりはじめ、その選択の差で、彼らの運命はまったく違うものになってしまう。
強く生きることを望んだサリーム。自分を犠牲にし、諦めることを選んだラティカ。運命を信じたジャマール。

すごく希望的観測かも知れないのですが、スラム街出身でも、ジャマールのように運命に導かれる人がいる。先進国で五体満足で暮らす私たちでも、運命に見放されることがある。
初めから決まった優劣のように思えても、実際は違うのかもしれない。教育を受けた私たちはミリオネアで勝ち進めないかもしれないが、ジャマールはそうではない。
貧富の差や人種の差、住む国、身体的強さ等によって、時にはハンデを負っているように見えるかもしれないけれど、私たち人間に存在する運命というのは、皆平等に開ているのかもしれない。
そんな風に思える作品でした。

こんなに夢中で観られる作品はなかなかないと思います。
JUN

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