Mikiyoshi1986

あゝ決戦航空隊のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

あゝ決戦航空隊(1974年製作の映画)
4.2
本日12月6日は東映の"将軍"こと山下耕作監督の命日であり、
そして東映任侠映画のスター俳優・鶴田浩二の誕生日でもあります。
山下没後19周年。
鶴田は存命ならば今日で93歳に。

東映任侠映画の最高傑作とも称される『博奕打ち 総長博徒』の山下監督、脚本の笠原、そして主演の鶴田という最強トリオが再結集し、
東映が5億円を投じて放った200分に及ぶ一大戦争巨編『あゝ決戦航空隊』

特攻の創始者・大西瀧治郎が抱えていた軍人としての覚悟や苦悩や葛藤を主軸に、
窮地に追いやられてゆく大東亜の戦況と大本営参謀の実態、更には散っていった特攻隊員や死に場所を失った航空隊員の人間ドラマを重厚に描き上げます。

戦後初の天皇批判映画とも云われる本作は特攻を美化するものでもなく、単に戦犯を断罪するでもなく、
極めて均衡を保った視線から正しい特攻の描き方に徹しています。

本作には実録の火付け役『仁義なき戦い』シリーズの主要キャストが集結し、任侠映画のレジェンド鶴田浩二が主演することで豪華なクロスオーバーも実現。

『仁義なき戦い』を四部作として終わらせた笠原は5作目『完結篇』の執筆を拒否して自身初のこの戦争映画に挑んだわけですが、
そもそも『仁義なき戦い』は敗戦後、行き場を失った多くの若者が親分の欲望のために消耗品として犬死にしてゆく疑似戦争ドラマでもあります。
つまり本作は『仁義~』から発展するべくして生まれた"犬死"英霊たちに捧げるヒューマニズム映画であり、
実録モノにハマれなかった山下が実質最後に描いた武人の様式美、そして鶴田の迫真の演技と相まってこの特攻映画の傑作は生み出されたのです。

山下・笠原の名コンビは本作を最後に袂を別ったわけですが、
終盤における菅原文太の演説シーンは逆説的に三島由紀夫の最期の演説を意識させ、
鶴田の壮絶な自決も同じく三島の自決や『憂國』からの影響をも含ませます。
特に鶴田の男泣きシーンは貰い泣き必至の名演技…!

そして明後日12月8日で真珠湾攻撃からちょうど76年が経過。
年々戦争体験者が減っている今、我々は未来の子ども達のためにも過去の過ちから多くを学ぶ努力をしなければならないのだと強く感じる次第です。
Mikiyoshi1986

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