シズヲ

新座頭市物語 笠間の血祭りのシズヲのレビュー・感想・評価

3.7
いっつぁん、地元へ里帰り。後に作られる89年版を除けば一応は座頭市映画の最終章にあたる作品だけど、正気の沙汰ではなかった前作『折れた杖』から軌道修正してめちゃくちゃ普通の作品に。有り体に言えば中期座頭市の黄金パターンっぽい。ストーリーも登場人物も全体的に没個性的な印象が強く、特に悪役は『市さんの幼馴染み』という美味しい設定を持っている割に関係の掘り下げが皆無で物足りない。シリーズ恒例の剣客用心棒も格好を付けてるだけでさっくり退場するし、冒頭から市さんの周囲をちょろちょろ動いてる若きチンピラ組も正直どうでもいいという感が否めない。

それでも久々に帰郷した市さんの哀愁と人情には何だかんだでグッと来るし、終盤に差し掛かる賭場のシーン以降の圧倒的な凄味なんかも最高。本作では中盤まで市さんが大人しくて中々仕込み杖を抜いてくれないだけあって、やくざモードに入ってからの畏敬じみたカタルシスには兎に角痺れさせられる。全身泥塗れで乗り込んでドスを利かせる市さんはもはや化物じみてた。勝新の強烈な殺陣が唸る最後の大立ち回りもとことん秀逸。切り合う中で俵から吹き出る米の飛沫、手足の切断や頸動脈からの出血などインパクトの強い演出が次々に繰り出される。
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