垂直落下式サミング

アラビアのロレンスの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

アラビアのロレンス(1962年製作の映画)
5.0
完全版DVDでは227分と、鑑賞にあたって気合いをいれる必要がある大長編映画である。撮影から50年近く過ぎた映画だが、まだまだ語ることがありそうな作品だ。
オスマントルコのアラブ反乱、イギリスの三枚舌外交など、第一次世界大戦から第二次世界大戦に入るあたりの中東の歴史をある程度知っていると、イギリス軍人のロレンスがその人徳で部族の信頼を得ていくほどに、彼等を裏切り続けることになってしまう苦悩や、自分の所属が曖昧なまま前に進まなければならない孤独など、さらに見えてくるものがあるかもしれない。
軍のなかに居場所を見出だせなかったロレンスは、自分を受け入れてくれたアラブ人の仲間になろうとするが、やはり彼等の民族の本質を理解することは叶わず、故郷に帰り平凡な生活をおくろうとするも、やはりどうしても何もなく誰もいない砂漠を求めてしまう。
ラスト。走り抜けてゆくバイクは、社会のしがらみも何もすべてを断ち切ろうと再び何もない無限の静寂が広がる砂漠へと戻るロランス自身なのである。