黒羊

太陽の墓場の黒羊のレビュー・感想・評価

太陽の墓場(1960年製作の映画)
3.8
「太陽の墓場」

昭和60年に作られた、大阪西成区の釜ヶ崎ドヤ街が舞台の人間ドラマ。

通天閣やネオンきらめく繁華街も出てくるが、その日暮らしのルンペンやヤクザ稼業、ボロ服というレベルを超えた服の日雇い労働者たち。その労働者から血を抜いて買い病院に売って、夜は売春で生計を立てる女…

登場人物は皆、脂汗ダラダラ。

ここは本当に日本か?と思える程のスラム、ドヤ街が舞台なので演出としては最高。人々のむわっとする体臭が画面から伝わって来そうな程。

学生時代(80〜90年代)はお隣の西成区にちょこちょこ遊びに行ってたけど、街は流石にこの映画のような戦後の雰囲気はないけど、人の質はあまり変わってなかったんじゃないかなぁ。ク◯リ打ちながら歩いてるおっさんや下着姿で歩くおばはん、ヤ◯ザや売人もよう見たわ笑
当時と違うのは日本国籍じゃない人達が凄まじく多くなった事ですかね?

出演者は、津川雅彦やアニソンでお馴染み、ささきいさお(美声も発揮!)、機動戦士ガンダムのナレーションや声優でお馴染みの永井一郎(松葉杖の人かな?)も出演…やけど誰が誰なのか分からない!

そしてストーリーもこれまたよく分からないッ!!昔の邦画あるあるですね。

劇中の人々は言う。この先日本は良くなるんか?まともになるんか?と。

この後の日本と言えば…80年代にバブル経済が起こり大景気になるが、その後は「失われた20年」やらなんやらでずっと不景気に。
この映画で描かれているドヤ街や日雇い労働者、抜け出せない底辺の人々は形を変え、非正規や低賃金ブラック企業から抜け出せず生活は安定せず、地方の経済停滞や人口減少、都会ではネカフェ難民など、まるで「銃弾の構造はずっと同じ」な社会構造。
60年代より今の方が自殺者も増えているでしょうね…

今の不景気でもそんな生活を送っている人は、全体数からしてやはり少ないとは思うが、社会人になってからずっと底辺、憂き目にあってきた俺にはチクリと刺さりまくり。

ストーリーは良く分からなかったが、当時の大阪の風景と人々のエネルギッシュな姿に魅せられた映画でした。昔の邦画にはやはり味がある!
黒羊

黒羊