イチロヲ

婦人科病棟 やさしくもんでのイチロヲのレビュー・感想・評価

4.0
精密検査のため短期入院することになった女性スタイリスト(朝比奈順子)が、相部屋の女性患者たちとの交流を通じて、自身のセックス観を見直していく。女の幸せ探しを入院患者の視点から描いている、日活ロマンポルノ。鈴木潤一監督デビュー作。

エッチな先生が絡んでくる艶笑喜劇ではなく、情感に訴えかけてくるヒューマン・ドラマの路線。自由恋愛主義者の主人公が、元トルコ嬢(小川亜佐美)、元ストリッパー(橘雪子)との紆余曲折を経ながら、自己を相対化させていく。

キーポイントとなるのは「堕ちるのが怖いから、自由という言葉に逃げる」という人間心理が働いているところ。堕ちていく姿を徹底的にシャット・アウトさせようとする主人公が、少しずつ目を見開いていく。

主人公に翻弄される男たちを中心にした恋愛劇と、女性患者の繋がりを中心にした人情劇が絶妙に交錯していく。橘雪子が病室のベッド上で披露する「エアまな板ショー」が最高潮であり、滑稽であると同時に、そこはかとない哀愁を受け止めることができる。
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