ルサチマ

鶴八鶴次郎のルサチマのレビュー・感想・評価

鶴八鶴次郎(1938年製作の映画)
4.3
濱口竜介の「親密さ」でもそうであったが、やはりある映画において二人が向かい合うことは亀裂を生む作用が働くことを意味するようだ。
代わりに三味線と大夫の語りの舞台やベンチは男女が同じ方向を向いて並ぶ装置となり、関係性は親密さを獲得できる。
序盤の芸事の喧嘩の見せ方が素晴らしい。
切り返しによって鶴次郎と鶴八が映画表現上向かい合わされた後に、亀裂を生んだまま劇場を時間差で出た二人は通行人の邪魔により、結局並んで劇場を出ることになる。
二人の関係は喧嘩しても寄りを戻さざるを得ない関係であることを示すのだが、成瀬巳喜男はこれだけに終わらない。
劇場を出て同じ方向へ帰ろうとした鶴次郎と鶴八を、鶴次郎は戸惑いから別の方向へ帰る。
序盤の喧嘩の展開から、すでにこの映画の鶴次郎の鶴八との下手くそな別れ方しかできない結末を描いて観客に示していた。
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