きゅうげん

インタビュー・ウィズ・ヴァンパイアのきゅうげんのレビュー・感想・評価

3.9
トム様×ブラピに子役時代のキルスティン・ダンスト、BL &おにロリな文字通りの「ヴァンパイア・クロニクルズ」です。

古典劇も閉口する大仰さは苦笑ものですが、しかし考証も行き届き豪華さも申し分ない美術の完成度には息を呑みます。
独立戦争前後の農場主感とか、フランスといえば劇場と地下墓地でしょ感とか、観ていて楽しい舞台ばかり。

“吸血鬼”とは疫病・土葬・人種などさまざまなフィルターを通して醸成された怪物で、その魅力はわけても不死者という上位存在である点にあります。
キリスト教的価値観をことごとく逸脱するインモラルさ、寿命の長さ・容姿の若さなどの生命的渇望など、意識的・無意識的な人間らしい欲が反射した存在と言えるでしょう。
とくに本作で重要視するべきは、それらすべてが自律的な選択によってなされるところ。
「自分が吸血鬼になること」や「相手を吸血鬼にすること」など、意思決定とその葛藤のドラマとなっています。
吸血鬼はすなわち、聖・俗どちらからも超然した絶対的個であるからこそ永遠の苦しみと向き合わざるを得ない、実存的なヒューマニズムに裏打ちされた切ない存在なんですね。
開放的なレスタトも内省的なルイも、どちらもあるべき姿なのでしょう。

しかしところで、ラストに突然ノリノリでかかるガンズ版『悪魔を憐れむ歌』はさすがに噴飯ものでしたね……。