ネズミツオ

ハロウィンII/ブギーマンのネズミツオのレビュー・感想・評価

ハロウィンII/ブギーマン(1981年製作の映画)
4.6
マイケル・マイヤーズ殺しのテクが格段にレベルアップ。病院を舞台に、1作目でブギーマンの標的にされたローリーと彼の因果関係が明らかになる秀逸な正統派続編。

前作のラストで忽然と姿を消したマイケル。その数時間後の出来事を描いているのが正にPART2を名乗るのに相応しいリアリスティックな演出。ザ・シェイプ(マイケル・マイヤーズ)にはスタントマンで、カーペンター作品や古くは『ジョーズ』で鮫と格闘するフーパーの代役を務めたディック・ワーロック氏が扮する。忍者のような身のこなしと引き締まった体格に作業着のツナギが良く似合う。今作からモンスターマスクメーカーの老舗ドンポスト社がブギーマンのマスクを提供。低予算で新たにお面を作る余裕がなく、ドンポスト製『スタートレック』のカーク船長(ウィリアム・シャトナー)マスクを流用。全体を白く塗りつぶし、眼球周辺をくり抜いた後、仕上げにモミアゲを毟り取ったら地獄のピエロのような不気味な表情が生まれたのだから正にスタッフの苦肉の策でもある。警官としても脇で出演しているディック氏。なかなかイケメンな渋い人で好きなホラー役者さんの一人でもあります。

女子高生と言われれば「ああそうなのか?」と渋々納得するけど、ジェイミー・リー・カーティスの角ばった輪郭と恐怖に怯える怖い表情は冴えない田舎の売れ残り女といった感じ(笑)魔の手から間一髪エレベーターに乗り込むハラハラ度合いは前作の追跡劇の延長戦とも取れる見事なシークエンス。ここで流れるノシノシと足を踏み締め近寄って来るブギーマンを表現した低いピアノのリズムが否が応でも盛り上がる。『アナベル』のエレベーター場面を観た時、ハロウィン2を参考にしているんじゃないかと感じるくらいソックリで嬉しかったです。

頸動脈を裂かれ血液が飛び散り、知ってか知らずか空気の入った注射器をこめかみに突き立てる。そしてあの首をかしげるピュアな仕草。人間の皮をかぶった悪魔がふと見せる乗り移った肉体の反射作用なのだろうか…。無計画なようで、もの凄く用意周到なマイケル。車のタイヤをパンクさせ、病院から出たり入ったり自由気まま。サスペリアPART2を連想せずにはいられない熱闘甲子園殺人!マイケルの皮膚は象の肌のように分厚くて火傷しないのだろうか(笑)

脱走させてしまった罪悪感から鬼のように追い続ける執念深い精神科医のルーミス医師。ドナルド・プレザンスは1作目で着ていた私物のスーツを大切に保管しており、この2作目で再び着用するに至った。銃の許可証は持っていると言っても、威嚇で発砲するのはどうにかならんのかと…。仮装していたマイケル似の少年は、人の命を救うルーミス先生が殺したようなものだし、暴走したらブギーマンと互角に渡り合えそうな危ないおっさんなのである!

悪夢を甘い夢に変えるコーデッツ版のミスター・サンドマンは心が洗われるような素晴らしい選曲。厚みが増したシンセサイザーのテーマ曲も個人的にはこの2作目の方が思い入れが強い。ローリーに優しく接する看護師ジミーには『ジョーズ4/復讐篇』で主人公マイケル・ブロディ役を射止めたランス・ゲスト。『ジョーズ』の警官ヘンドリックスで馴染み深いジェフリー・クレイマーは歯科医役で出演。ここでジョーズ1と4が繋がったわけだww ジョージ・A・ロメロ監督の処女作『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』をTVで放送中にブギーマンが殺戮を繰り返すというのもバックボーンとして面白い設定だと思う。

【2017年10月31日(月)】ホラー・マニアックスの
HDリマスター版ブルーレイで鑑賞。
(ドルビーTrue-HD 5.1chサラウンド・リミックスで)
※初見は1988年7月1日(金)
日本テレビ「金曜ロードショー」のTV初放送で。
ネズミツオ

ネズミツオ