これはサルバドール・ダリの創造の欠片か。
それとも彼の様なシュールリアリズムへの飽くなき探求か、ただの模倣か。
はたまた恣意的悪戯か。
否、それはつまり気鋭の監督の古典に対するアンチテーゼか。
オープニングから怒涛の前衛芸術を浴びせ掛け積み重ねる映像の多山。
その映像はまさに情報の洪水の様に私達の感情を圧倒し、殺し、呑み込みそれらは重なり合いちぎり絵の様にコラージュされていく。
それは一見、現代への警鐘にも見て取れるし、サブリミナル的アプローチを詮索して意味を真剣に探求する私達を単に嘲笑っているかのような気もする。
次第に麻痺しつつある観客の感性にさらに突き刺す人間の表裏、謎めいた部分を醸すドラマのサスペンス的な鋭さ。
人間という化けの皮であり、つまりはペルソナ。
この女優の底知れぬ心の描写を精神的ストレスによる失語という事で言葉を発しずに相手の心の奥へ深く入り込むその卑しさたるや。
さらに看病をおこなうアルマを巣食う心理面の変化は恐ろしさ満点。
共感から依存、そして寄生されるその様!
それでも2人は仮面を更に被り続ける。
「得体の知れない」とはまさに本作であろう。
素晴らしい。ベルイマン!