失語症の女優と看護師のほぼ(2人)芝居。テーマは言葉と沈黙に母性に罪、そして映画そのものと多様なテーマを含んでいる。初っ端から磔刑にクモに男性器とシュルレアリスム的イメージが炸裂してこりゃやばいぞとなるのだが全部見終わってみると抑圧されていた、秘めていた性の欲求(性器)に母性、女の象徴としてクモ、そして罪の意識として磔刑、いくつものペルソナをもつ女優、映画そのものが主人公といったところか。最初は喋り続ける看護師の方がどちらかというと優位な立場に思えるのだが、そうもいかず、なぜなら沈黙はどんな言葉も受け入れるように見えて喋る側の仮面を剥がしどんな感情も虚無で返してしまうからだ。人は仮面をかぶって生活する生き物だがその仮面と内面があまりにも違ったらどうなるか。彼女たちは外面はそのままに内面が入れ替わり、または内面はそのままに外面が入れ替わったりと奇妙な関係性になり挙げ句の果てには１つに統合されてしまう。映画を通してどれだけのことを作者は伝えられるものか。人間の心理と真理、存在と多面性についてベルイマンが奔放に描いた傑作。
