草

仮面/ペルソナの草のレビュー・感想・評価

仮面/ペルソナ(1967年製作の映画)
3.9
エンタメとして面白いかというと、決して面白くはないです。

けれども、さすが巨匠ベルイマン、最後までしっかり観れました。

まずは画がすごい。
序盤のサブリミナル映像は正視に耐えないぐらい鮮烈かつ印象的。ファイトクラブで観たことあるような画もあり、後世にも影響あたえてるよう。
全編通して画の緊張感を張り詰めようみたいな意図を感じて、キツいカットをときどき挟んでくる。
それが余人には真似できない芸当で、たとえば横たわった女性がこちら(視聴者側≒カメラ側)を見つめたまま30秒ぐらい続くカットなぞ、もはや暴力的だ。見つめられた視聴者を、我に帰らせる暴力。しかもそのまま夜が暮れて、女性の顔はだんだん見えなくなる。ヤバすぎだろ。
こんなギリギリの画が随所にあるが破綻しないのはセンスなのかなんなのか、、

また、物語も二人の女性を相補的に見せたあとに決裂(分裂?)させていく過程を描いたもので、実際、話に意味があるかと言えば明確にはないんだけど、ああ…わかる…そうなんだよ…みたいな印象を喚起される感じ。なんか忘れられないなーというやつで、同時代のフェリーニにも同じ印象を抱く。

たとえばナースの女性の秘密を女優さんが他人にバラすところとか冷静に考えれば、だからなんなんだ、という話なんだけど、見てるとああ…それなんだよね…という妙に納得させられる感じ。

批評しようと思えば余地はあるのかもしれないけど無闇にいじくり回す必要は感じない。カメラの存在を意識させる演出が示唆するとおりこれは現実を再構築しているもので、日常系アニメに批評はいらないのと同じ。

エンタメ的な面白さがないのでやや低くつけたけど一見の価値あり。
草