凄い映画を見てしまった。
人は誰しもさまざまな顔を持っている。一人のときの顔、外での顔、仕事してるときの顔、恋人といるときの顔、環境に適応するために仮面を被ってしまう生き物である。
失語症になってしまった舞台女優のエリザベートもまさに自分の人生を演じて虚像の顔を作りあげてきた女性の一人だ。
そして彼女は献身的な看護婦アルマとともに、別荘での閉鎖的な共同生活を送ることになるが…。
"沈黙"と"喋り続ける"の対比。映画が進んでいくにつれ、巧みな表裏的演出が用いられ、だんだんと自己と他者の境界が曖昧になっていく。大人になればなるほど社会で色んな顔を求められる時代だが、たまに自分が二重人格になってしまったのかと混乱することがあるよね。クライマックスの二つの顔のモンタージュなんかは、そんな錯乱状態にさせられる凄まじい心理描写だった。ずっとえ…？え？！って感じだった。
この手の結末の解釈が観客に委ねられる作品って、見終えたあとすぐに誰かと語りたくなるよねw
映画のほとんどがアルマの独白セリフになっているため哲学的で文学っぽい難しい奴だなーとか思いながら見てたけど、さすがは映像の魔術師ベルイマン。映像だからこそできる"隠喩"の可能性が存分に試されてる実験的な作品だったと思う。
リアルな人間の深層心理を炙り出した傑作だった。
