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仮面/ペルソナのcollinaのレビュー・感想・評価

仮面/ペルソナ(1967年製作の映画)
5.0
最初の映像の交錯から、興奮がとまらなかった。数年前に「ファニーとアレクサンデル」を観たときと同じ興奮かもしれない。ベルイマンの作品は、私を作品の世界に深く深く潜らせてしまう。

82分だなんて信じられない。観終わったあと、深呼吸をした。1秒も見逃したくなくて、息を止めていたからかもしれない。字幕を追うのも惜しい程だった。

自分の二面性に疲れた彼女は、失語症の仮面を身に纏う。

社会で生きていくための仮面と、制御できない自己愛しか存在しない仮面。本当の自分は存在しない。全てが自分であって、結局、仮面を剥いでは仮面が現れる。虚構の先を見ようとしても、何も見えない。何もないから。それは、他人に投影しても同じ。沈黙を続ける言葉は溢れだし、どこからともなく現れる仮面には人間は抗えない。行き着く先には何もない。

頭のなかでまだ浮遊していて、巧く自分の中に吸収しきれていないし、言葉にしようとしても、それは形を伴わないふわっとしたものになってしまう。ベルイマンが無駄なく82分で描ききった鋭さを、私の言葉で曖昧にしてしまう。

仮面/ペルソナは、これからまだ何度でも観る。
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