映画おじいさん

細い目の映画おじいさんのレビュー・感想・評価

細い目(2004年製作の映画)
-
誰もが胸キュンのボーイ・ミーツ・ガールなフォーマットを通して馴染みのない多民族社会を描いた超傑作でした!

「良い子だから愛するのではなくて、ただ自分の子だから愛するのだ…」という冒頭の詩の朗読から鷲掴み。詩ごころは全くないんですが(のちにタゴールと分かるのがニクい)、あの詩は全文をメモってどこかにしまいたいくらい。

ディカプリオと金城武のどっちが良いかというたわいのない(と、そこでは思える)会話シーンを普通に撮らずに、蚤の市の人混みの中を歩く二人を上からロングで撮るとか、画も感動的に素晴らしい。
あとで気づいたけど混雑する蚤の市は多民族社会の象徴かも。

ジェイソンがチンピラの兄貴の妹と会話してるときにフレーム外にいたり、最後の方での車の中で話す父親の姿もフレーム外。想像をかきたてられてワクワクする、重要な会話の相手を映さない手法に感心。

音楽もサミュエル・ホイの中華歌謡やらオペラ、モリコーネのようなストリングス&ピアノ曲(←エンドクレジットにあったイーストウッド作のマディソン橋のサントラってこれ?)も最高。どうでもいいけどKPMライブラリー音源を多く使っていた。

表情豊かなオーキッドは観ていくうちにキュートさが増していくタイプ。ジェイソンに「女の子はふつう恋愛映画が好きだよね」と言われたときのゲッというような表情とか、中国人に対して差別的な男の子を言い負かす時の百面相は最高でした。

苦手なエドワード・ヤン監督とよく比較されていたので敬遠していたのですが、共通点は夭折したってことだけやんけ! 誰だそんなこと言ってんのは。

ちょっとだけ似てるでいえばタイのアポチャピ監督でしょう。あんなに難解じゃ全くないけど。
前世の話とか、時折出てくる子供の映像、ジェイソンがなぜかオーキッドの父親が元教師だと知っていたり、そしてラストの電話とか。
それでいて本作はスピッた匂いをほとんどさせていないというところに違いがあるというかヤスミン監督の凄さがあるのでは。