すかちん

忠臣蔵 花の巻 雪の巻のすかちんのレビュー・感想・評価

忠臣蔵 花の巻 雪の巻(1962年製作の映画)
3.0
<原節子 生誕100年>特集より。

3時間27分+途中休憩10分、の長丁場だが、まあストーリーはだいたいわかっております。あとはもう日本映画黄金時代のスターたち、歌舞伎界の名優たちが湯水のごとく出てくるのを味わい尽くすだけ。あまりにも豪華な松の廊下のセットに見惚れるだけ。歳とってから、自分が物心つく前、生まれる前の映画観るのがこんなに面白いとはね。

八代目市川中車が演ずる吉良上野介の、底意地の悪い、ケチで強欲な腐れじじいぶりがまずは圧巻だ。佐藤允は『独立愚連隊』からそのまま出てきたかのよう。エロ度高過ぎの水野久美。「ちびっこ怪獣ヤダモン」でインプリントされている中島そのみの燗にさわる声、もとい甲高い声はここでも響いております。そして何より、三木のり平の軽快軽薄なる幇間芸を長尺フル・ショットで2演目。討ち入りシーンの勇ましい音楽は明らかに『ゴジラ』のテーマの変奏版、そりゃ伊福部昭だもの。でもって、終盤には、凄絶な殺陣の応酬、みごとな死にざまの連打。

数少ないカラーで観られる原節子は、これが引退作。大石蔵之介の妻りくの役で、武家の妻らしい凛然たる気品をたたえている。突出した見せ場はないが、こうしたフェイドアウトも原節子らしいと言える。
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