本日6月22日は敬愛するビリー・ワイルダー監督の生誕111周年!
ワイルダーが「深夜の告白」で成功を手にしたすぐ翌年、
オスカーを初めゴールデングローブやカンヌなど、賞レースへ躍り出るに至った彼の記念すべき代表作「The Lost Weekend」
作家ドン・バーナムがアルコール中毒症状に苦しみ、徐々に廃人と化してゆく姿をスリリングに描いた本作は、アルコール依存症を初めて扱った映画でもあります。
心の弱さと不安が人を酒に走らせ、溺れ、抜け出せなくなる中毒の恐ろしさ。
酒を手に入れるためなら何度でも周囲の人間を欺き、どつぼに嵌まっていく様をサスペンスタッチで描いていくワイルダーの手腕も素晴らしいですが、
主人公を演じたレイ・ミランドのアル中演技はやはり圧巻。
精神を病み、幻覚に脅え、死に取り憑かれる男を緊張感たっぷりに演じ、その鬼気迫る演技によって本作を不動の名作へと押し上げました。
ワイルダーの得意とする小道具の使い方や卓越した演出力、並びに独自の映像表現は、以後の傑作を生み出す上でも重要なターニングポイントになったと云えるでしょう。
脚本の共同執筆は初期のワイルダー作品を手掛け、プロデューサーとしても彼の才能を支えてきたチャールズ・ブラケットであり、
ワイルダー初期作品のキレあるストーリー展開や強烈なインパクトを残すエンディングなど、彼の貢献無くしてワイルダーの出世はあり得ませんでした。
本作は酒に限らずとも、中毒に苦しむ人への救済と、周囲も決して見捨ててはならないという戒めの思いが込められているのです。