しゅう

失われた週末のしゅうのレビュー・感想・評価

失われた週末(1945年製作の映画)
4.2
字幕版を鑑賞。

レイ・ミランド演じるアル中作家のノーブレーキの堕ちっぷりがいっそ気持ち良い。最早、呑むや呑まざるやの葛藤の段階はとうに過ぎて、酒を前にすれば理性も尊厳も一瞬にして消し飛ぶアル中の病理が徹底的に描かれる。

アル中と作家と言えば、昔愛読していた中島らも氏の自伝的小説「今夜、すべてのバーで」を思い出す。

この本では、主人公のライターが自分のアル中ぶりを自己分析するのだけれど、その中で印象的だったのが「アル中は普通の人々が向き合っている"剥き出しの現実"を直視する事に耐えられない。だから世界との間にアルコールの皮膜を作っている。」という記述(大昔に読んだので正確では無いかも)。

これを読んで、現実に正対する事が苦手な自分の様な人間は容易にアルコール依存性に陥ってしまうのではと思えて恐ろしくなり、以来最低限の付き合い以外では決してアルコールを口にしないようにしている。

映画では、作家はアル中として味わった負の感情を作品として昇華する事で依存性を克服するが、中島らも氏はこの小説が評価されても尚連続飲酒が止まらなかったので、現実はより過酷なのかも。