むっしゅたいやき

つながれたヒバリのむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

つながれたヒバリ(1969年製作の映画)
4.3
チェコ、イジー・メンツェル監督作品。
進行するスターリニズム体制下で制作され、「プラハの春」事件の後検閲の為その公開が凍結、89年のビロード革命後に漸く日の目を見た作品。
個人的に、メンツェル作品で最も評価する作品である。

本作はチェコ・スロバキア共和国の思想教育収容所を舞台とした作品であり、そこに収容されスクラップ工場にて強制労働に従事する人々の生活をユーモラスに、且つシニカルに描いた物である。
その特筆すべき点としては、監視人、労務管理者を含め、登場人物達を平等に「体制にあくせくと従う小市民」として描いた事であろう。
彼等も自宅へ帰れば子供へ贈り物をする良き父であり、また新妻の浮気を心配する夫なのである。
そこにはメンツェルの、「自由を抑圧するのは"人"では無く"体制"である」「体制が人を揺るがせ、悪行の萌芽を現す」とする主張が見受けられる。
前者は特にドラム缶の焚火へ手を差し出す看守の姿に、そして後者は制度を私的流用し、年若い女性の沐浴を手伝う管理者の姿に、これ等の主張は強く示されるのである。

本作は終盤、希望と絶望相半ばする様態を見せる形でエンドロールへ繋がる。
そこにはメンツェルの、当時のチェコ・スロバキアの行く末を案じる姿が隠されている様に思われる。
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