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つながれたヒバリのryosukeのレビュー・感想・評価

つながれたヒバリ(1969年製作の映画)
3.7
騒音と粉塵に塗れた鉄屑の処理場を舞台に、淡々と労働者、女囚の日々を捉えていく。十字架等、共産主義体制にそぐわないものはゴミとして捨てられている。
体制への批判は、他のチェコ・ヌーヴェルヴァーグ作品とは違い、直接的で思いっきりセリフとして言わせてしまう。こんな作品が検閲通るはずもなく。そもそも制作まではできたことが驚き。
火を囲む労働者、女囚たちの輪に看守が加わる様子や、結婚を世話する党員など、体制側の個々の人間についてただただ悪と断定するわけではないところは、人間への温かい目線を感じさせる。
教師が女囚たちを帝国主義に浸った危険人物として紹介するのだが、パンで順番に映し出される彼女達からそのような匂いは全くせず、温かく人間的にしか見えないのも印象的。
ラストのシークエンスは素敵。序盤と立場が逆転した形で、光の反射によるコミュニケーション、返答がなされる。地下に下降していく中で、哲学者は「幸せだ」と言う。少しずつ光が小さくなっていく描写は、明日も厳しい現実かもしれないが、どこか希望を感じさせる雰囲気もある。
映像には全体的にそこまで面白みはない。「人生タクシー」見た時も、金熊賞は映像表現ではなくテーマを重視することも多いのではないかと思ったが、本作の受賞も公開までの受難が影響している気はする。
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