かーくんとしょー

シカゴのかーくんとしょーのレビュー・感想・評価

シカゴ(2002年製作の映画)
3.5
大好きなミュージカルの映画版。
このミュージカルが好きな理由は、「グレート・ギャツビー」と同様、ジャズ・エイジの狂騒が肌で感じられるから。
歴史の浅いアメリカの中で、最も不可思議で掴み所がなく、色彩は虚しいのに光彩は華々しかった一時代のお話。

時代の特徴を簡単に述べるのは大変難しいが、最も特徴的なのはマスメディアの著しい発展。
単純にマスメディアが発展して便利になったというだけの話ではなく、それに伴いセルフ・プロデュース(魅せ方)の重要性が高まり、故に逆説的に秘密(ミステリアス)の重要性も高まった。
そうした観点で見ると、実はこの時代は今のSNS全盛時代にとてもよく似ていて、上手く魅せれば寵児、飽きられたらお終いという刹那的な時代だった。

そんな中、不倫相手を銃殺した売れないクズカワ系女優のロキシーが、抜群のセルフ・プロデュース力を生かし、また同じくセルフ・プロデュース力に長けた胡散臭すぎる弁護士のビリーと組んで、陪審員制度で無罪を勝ち取るお話。
ビリー役のリチャード・ギアが、まさに寵児感を纏わせて嘯くのが堪らない。彼って元々ハンサムすぎて胡散臭いところあるしね。(笑)

ミュージカル映画の一つの特徴として、ストーリーが単純明快な分、戯画的なキャラクターを配置しやすいという面がある。
本作も例に漏れず、それぞれが如何に世論を味方につけて浮き沈みしていくかがわかりやすい。
戯画的な分、底は浅くなるが、その明快な論理故に、過去の歴史を語るのに合致した様式と言えるだろう。
「マスメディア全盛のジャズ・エイジでは、こんな奴が成り上がり、それから沈んでいきましたよ」と、アメリカの一時代の縮図が本作には詰まっている。

個人的に、楽曲のインパクトが他の著名なミュージカル作品に比べて劣っているように感じるのが数少ない弱点。
が、それを補って余りある視覚的な煌びやかさを楽しめる作品だと思う。
映画版も素晴らしいが、作中の場面がかなり限られている分、舞台で一層映える作品でもあるので、映画で興味を持たれた方はミュージカルでも是非。

written by K.
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