ひろ

雪の断章 情熱のひろのレビュー・感想・評価

雪の断章 情熱(1985年製作の映画)
4.7
100分80カット(74カット目からエンドロール)

物語がミステリー仕立てで進みつつ、実際にはミステリーよりも「女の物語」だから、謎解きを期待して観た人に貶されるのは理解が出来る。

まずは「女」の部分をピックアップする。

19カット目で、帰宅した斉藤由貴が家政婦の河内桃子から、自分の部屋に警察が入ったと知って、自室で怒り狂い、部屋に入って来た河内桃子が机の上の花を見て、「(榎木孝明は)花のように美しく咲くのを期待して(あなたを)拾ったんじゃないか」的な事を斉藤由貴に言い、斉藤由貴は己の中の"女"を意識する。
22カット目で、シャワー後に鏡を挑発的に睨み続けて、斉藤由貴は"女"になる。
23カット目は、榎木孝明と斉藤由貴が電話をしており、榎木孝明を"異性"として意識したように話をする斉藤由貴。それに反して榎木孝明はデートをしている最中という残酷さ
(※ちなみに『光る女』でもあったが、電話をしてる2人が同一ショット内に収まっており、榎木孝明から右へパンすると斉藤由貴、さらに右へパンすると榎木孝明のデート現場へと変わるのが面白い。)

ここまでが斉藤由貴の中の「女」が誕生した部分。

25カット目ぐらいで、ボーイフレンドが寝盗られた事を聞かされ、斉藤由貴の中の「女」がざわつく。
(ここで『情熱』が流れ始め、26カット目は、浮浪者を見つめるのが成瀬巳喜男『めし』みたいで目を引き、27カット目は、窓枠の無い謎のバス乗車)
28カット目、斉藤由貴は榎木孝明を千歳空港まで迎えに行くが、婚約者と一緒に居るのを目にして、走り去る。
31カット目で榎木孝明の婚約者と話し、32カット目で、憂さ晴らしのようにバービーボーイズ『負けるもんか』を躍り狂う。

ここまでが、「女」に目覚めた斉藤由貴へ降り掛かる痛み。
男を介して、女になっていく斉藤由貴の姿は面白い。この後、どんどん変わっていくから凄い。「キスしてください」と言う時の斉藤由貴は、もう別人!

中山ラビ『ノスタルジィ』が流れる中、怪しい人形が出て来たり、川に飛び込んだりして、斉藤由貴は自我を彷徨うのだが、この人形が不気味で、さらに言うと、冒頭から自動人形が出て来て、ラストにも出て来る。
この人形が斉藤由貴の心の支えなのか、斉藤由貴を嘲笑ってるのか、何なのか。謎めいている。

また、光が印象深い。
58カット目、おでん屋を探し歩いていたら、少し開けた道に出る。道は濡れていて街頭に照らされ、画面奥は船の灯りで輝いている、綺麗なショット。
69カット目の終わり、遺書を手にする斉藤由貴の影がだんだん消え去って、明るく照らされる所は、感動的で印象深い。

冒頭の長回し以外にも、この作品は見所が沢山あるのだけれど、冒頭のインパクトが強過ぎるので、あえてそこに触れないように感想を書いたら、ワケが分からなくなった。それでもいい。とにかく『雪の断章 -情熱-』は傑作!