COZY922

007 スカイフォールのCOZY922のレビュー・感想・評価

007 スカイフォール(2012年製作の映画)
4.3
時と共に変わりゆくものと変わらないもの。時の流れがもたらしたもの。それらにどう向き合い,乗り越え,または,受け継ぐのか。スカイフォールを観て感じたのは「時」と「変化」、その変化の中で自らの「アイデンティティ」をどこに見い出すかだった。

これで3作目のダニエルボンド。前2作と違い彼はなりたてのスパイではなくベテランの域にある。歳を重ね経験値が増えた一方で、技術が進歩し新しい戦い方やアプローチが可能になった時代。ある事件の不手際を問われ潮時だと通告されるMとボンド。オープニングアクションの衝撃的な ”死” でいきなり物語に引きずり込まれ、それに続く芸術的で暗喩的で美しいタイトルバックに心を鷲掴みにされ、更に007の存在意義を問う この展開に本作が特別なポジショニングの作品なのだと感じさせられた。

変わるものとして描かれる技術、仕組み、環境。変わらないものは生い立ち、起きてしまった事実。そして、どちらにもなりうる人の心、人間関係、絆。共に諜報員として忠誠を誓いMのもとで任務に就いたボンドとシルヴァの道を分けたものは何だったのだろうか。それは、” 自分が信じる人の判断をどこまでも信じること ” に他ならない。信頼する相手の判断を信じ結果もろとも受け入れるか、起きた結果の事象に囚われ相手の心やこれまでの関係までも否定してしまうか。

原点の地であるスカイフォールで戦いながら自分と対峙したボンドが 失った大切な存在と そこで再確認した自分の生き方。そして明日からの日々への新たな覚悟。カジノロワイヤルからの3作品。喪失を伴いながら自己を築いてきたボンドという男の、アクションにとどまらない濃厚なドラマに心が震えた。

目が釘付けになる美しくて洗練された映像、硬質で孤高な空気とエロスとが同居するダニエルクレイグの眼差しと佇まい。サイコパス気味の悪役。ドラマを彩る多様なエレメントも秀逸だったと思う。