ねこたす

007 スカイフォールのねこたすのレビュー・感想・評価

007 スカイフォール(2012年製作の映画)
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改めて見ても傑作だ。2回目ともなると、違う部分に目が行くが、細かいところまで作りこまれている。

やはり監督のサム・メンデスの手腕というところか。正直クレイグの前作2つとは比べ物にならない。
一つの映画として完成されている。

カーチェイスからバイクへの流れ。スピード感があって小回りが聞く追走劇は、車と走ることの良いとこ取りをしたようなものだ。冒頭からセンスを見せつける。

そして、この作品を語る上で外せないOPへのシークエンス。
自分の影を撃つボンドの意味には、初見じゃ気づけない。

重要な選択を迫られた時、どちらを取るか。現場の人間からすると、どれだけ言いつくろっても冷酷な判断にしか聞こえない。それがプロの振る舞いと言うが、そんな世界に長くつかり過ぎてしまったのだろうか。
そんなMを、どうしてもサッチャーに重ねてしまう。

007第一作目「ドクター・ノオ」の公開から50周年ということもあり、過去作へのオマージュを散りばめながら、"古さ"や"世代交代"というテーマを描き出そうとする。

そもそも原作が古い小説なのだから、色々無理が出るのが当然なのだ。それをルックスや、アイディア。現代に通じる批評性を伴って新たに語りなおしたと言っていい。
髭剃りで再スタートなんて、なんとオシャレなことだろう。

何よりスカイフォールが極上の映画になっているのは、撮影のロジャー・ディーキンスの力が大きい。とにかく、画が決まる。どこをとっても絵画的であり、うっとりする。
MI6、シルヴァ初登場の長回し、スコットランドの古い家ですらあれだけ決まるものだろうか。

特に、上海の撮影は見れば誰だって良さが理解できるレベル。現代の都市を、青を基調としたカッチリとした画面で切り取る。そして、ネオンをバックにした戦闘。こちら側には黒い影しか見えず、どちらが優勢か分からずドキドキする。

今回の敵、シルヴァはボンドの合わせ鏡だ。OPの影や、劇中何度か登場する鏡が印象的だ。同じ思いを共有するはずの彼らが分かり合えないのは、"意志"の違いからだろうか。余計にシルヴァをいらつかせる。

審問、シルヴァ、ハッキングシーンを細かく見せる演出も巧みだし、審問襲撃の場面でさりげなく後の展開の伏線を上手く張っている。

そして、現代から逃げるように過去へ遡る。
おそらくファンは嬉しいだろうボンドカーの登場を理解できないのが悔しい。時間があればシリーズを最初から観たいものである。むしろ、それを推奨しているかのようだ。
スコットランドに行くのも、そういうことだよね?

生まれた場所を使い、数の不利をホームアロン的方法で解決しようとする。Mは天井の埃を被ったり、ボンドカーが爆発するのが過去への決別のようで一抹の寂しさがある。

一緒に終わろうとするシルヴァがどうしても憎めない。愛に溢れるマザーコンプレックスじゃないですか。そして、真のボンドガールは彼女だろう。

ラストからは、また気持ちを新たにこのシリーズを続けていこうとする意志が感じられた。古びたって劣化したって、やる時はやるのだ。
素人ながら、スペクター前に気持ちを入れることが出来て良かった。