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007 スカイフォールのkouのレビュー・感想・評価

007 スカイフォール(2012年製作の映画)
4.5
多くのレビューで語られているように、素晴らしく美しく、そして今の007映画として再構築を見事に成し遂げた作品は無いのではないか。やはり監督と撮影、編集の見事な組み合わせによるものだと思う。

007という長年続いてきたシリーズで、ある意味時代遅れのように語られることも多く、他のスパイ映画との比較がされてきた。そんな中今作は冒頭からボンドの死を描くのだ。まさに007自身の存在意義を問うような内容となっている。ボンドの死へと繋がる、流れるような冒頭のアバンタイトルまでのアクションの見事さ、その後のオープニングまでの流れのなんと見事なことか。

その後今回の敵であるシルヴァと会うのだが、このスパイの悲哀、使い捨てられる存在であることが示される。最終的には自分を捨てて、ただ上司のために命をかける存在。そして同時に描かれるのはボンド自身の老化だ。体力的にも技術的にもスパイとしてかなり衰えてきている。

今作はそんなダークで暗く、物語が進むにつれ次第に彼自身のルーツに戻るような作品となっている。それを物語るようにアストン・マーティン、ワルサーPPKと、このシリーズだからこそぐっとくる要素が散りばめられる。

死の先、全てがなくなったその先、ボンドがどういう選択をするのか、そして迎える新たな物語の始まり。見事に破壊と再構築を成し遂げる。映像も言うまでもなく見事だ。作り込まれた対称的な絵作りに痺れる。極めて異質、であり傑作であった。個人的には女王陛下の007と並ぶ傑作だと思う。素晴らしかった。
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