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007 スカイフォールのTEPPEIのレビュー・感想・評価

007 スカイフォール(2012年製作の映画)
4.6
「スカイフォール」は007シリーズに新たな命を吹き込むと同時に、大きな起点になったある意味でシリーズ最高の作品といえる。前作の「慰めの報酬」は脚本家ストライキでダニエル・クレイグまでもが脚本に参加するという事態になったが、今考えるとクレイグはあの作品でボンド役を嫌ったように思える。指ちょん切ったわけだし。興行的にも批評的にもイマイチだった前作のためかなりのブランクがあったのも事実だが、「スカイフォール」はオールドファンのみならず、ダニエルボンドが良いと思える作品である。そもそもこのボンドは「カジノ・ロワイヤル」とは違い、ベテランスパイという設定になっており、全体的にはダークながらもシリーズの細かいながらも良い点を生かしている。しかし殆どは新たな試みで溢れている。その試みがなぜか日本では賛否になったが、ボーンシリーズの真似事だった前作に比べればサム・メンデスのニヤッと演出は心地よい。実際前作のマーク・フォースター監督もかなりアートな演出で魅力的だったのにそれが数シーンしかなかったのも事実。ソニーの行き急いだ感じが実に漂っていたが、本作は泥臭い映画になっている。ジェームズ・ボンドとは何者かというタブーに入りながらも物語が魅力的で、これまでのシリーズと異なりMI6としてではなくボンドとしての闘いが描かれる。発明品とかお約束の口説きとか基本的ユーモアは排除されるが、程よいオマージュと英国製「ダークナイト」と「ヒート」を感じる。別に007じゃなくてもいうわけではなく、007が実に古い作品か意識すれば今回の世代交代というテーマは真っ当である。メンデスの画はとても美しく、ジェームズ・ボンドというスパイの味をうまく引き出している。わりとシビアな製作過程であったが、そこが功を奏している。反対に「スペクター」はやっちまった印象が強いがそれもご愛嬌。
総評としてハビエル・バルデムの悪役も印象的な「スカイフォール」は007を総収した巧みな一本。007ファンとしてはベストの部類に入る。ちなみに「ロシアより愛をこめて」と「カジノ・ロワイヤル」、ティモシー・ダルトンのボンドシリーズもお気に入りだ。あとは映画ファンにはたまらない一本が「女王陛下の007」。ジョージ・レーゼンビーのボンドがまたいい…ダニエルボンドの唯一の弱点は英国紳士というより産業スパイという点かもしれない。しかしボンドとしての力は本物なので、ダニエルボンドの最高峰として「スカイフォール」は胸を張って面白いと言いたい。
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