シズヲ

デス・レース2000年のシズヲのレビュー・感想・評価

デス・レース2000年(1975年製作の映画)
3.7
ロジャー・コーマンが世に送り出した伝説的カルトムービー!!“近未来のアメリカで大人気の大陸横断殺人レース”という誰かが一度は夢想したであろう(?)馬鹿げたアイデアを大真面目に実践してしまう活力に脱帽。殺人でポイントが得られるというルール自体もさることながら、“女性や子供を殺せば高得点”だの“高齢者殺人はポイント最高”だの仮に思い付いたとしても躊躇いそうな俗悪設定が最低すぎて笑う。安楽死デーってなんやねん。

近未来世界観の何とも言えぬチープさも味わい深く、わけのわからない改造が施された殺人マシーンのビジュアルは特に奇抜でダサくて素晴らしい。牙とか刃とかくっついてたり、絶妙に安っぽいペイントで塗装されていたり、兎に角トンチキな趣に溢れている。マシーンに搭乗するレーサー達も当然の如くイロモノ揃い。主役のデヴィット・キャラダインの変態的風貌なんかはしょっぱなから度肝を抜かれる。無名時代のスタローンも常にキレまくってて粗暴なのでやたら印象に残る(体格が良いので彼がキレると妙に怖い)。

奇天烈な内容といえどカースタントそのものは結構な迫力で、レーサー同士が並走して鎬を削る場面にもちゃんと疾走感がある。ダラダラと漫才ばかり続いていた『キャノンボール』よりは何だかんだレースしている気がする。低予算ながら爆発などの派手な演出もちらほら見られるので中々に景気が良い。殺人シーンも過度にスプラッター化しない程度に工夫を凝らし、馬鹿馬鹿しいテンションでサクサク見せてくれるので職人魂を感じる。BGMの妙ちくりんなセンスやお色気要素も微笑ましい。

単純な悪趣味B級娯楽作ということもあり、テンポや演出などの部分で年代的な限界を感じてしまうところはちらほらある。また映画を単調にしない為に盛り込まれたであろう“フランケンシュタインとアニーの駆け引きと交流”は割と退屈でどうでもいい。何というかフランケンシュタイン、変にクール気取って真面目ぶってるんだよなあ。シュールな笑いで済ませるにはウェイトが大きすぎてちょっと面白味に欠ける印象(それにしたってシュールで笑うけど)。でもラストの超展開じみた結末はやたら好き。なに高尚っぽく締めとんねん。

紛れもないボンクラ映画だが、端々から製作サイドの熱量が伝わってくるので憎めない魅力に溢れている。カルト映画界におけるレジェンドとして今なお愛されているのも納得してしまう。
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