安堵霊タラコフスキー

フェイシズの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

フェイシズ(1968年製作の映画)
4.8
映画監督としてアメリカで最もヌーヴェルヴァーグを感じる作品を撮ったカサヴェテスの代表作

タイトルの通り人物の顔が大写しになるカットがとにかく多くて、さながらヌーヴェルヴァーグ時代の裁かるるジャンヌ的な作品になっているが、リアルな撮り方と役者陣の迫真の演技のために時間を忘れるほど魅入ってしまう

導入部の効果でメタ的な映画としても観ることが可能となっているが、ふとこれが映画で作為的なものなのだと思い出したときにリアリティ溢れる劇中の出来事も全て演出の下で行われたものであるという事実に改めて驚かされ、カサヴェテスの手腕に舌を巻くこととなった

限られた場所でも技巧とアイディアで見応えのある映画はできるという低予算映画の道を示した先駆的な意味でもこの作品は重大で、こうした新風を感じさせる映画を作れたのはオーソン・ウェルズやバスター・キートン同様カサヴェテスが俳優から監督になった人物だったからだろうか

ところでこのアカデミー賞候補にもカサヴェテスの代表作が、93年になってからようやく日本公開されたのは、通好みの作風ということもあるんだろうけど、それにしても日本に渡るまであまりに時間がかかりすぎだろう