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ニンジャ・アサシンのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ニンジャ・アサシン(2009年製作の映画)
3.5
 忍者とは神出鬼没で、時代を越えて現代に現れる。光の当たらない影の中でひっそりと息をしながら、彼らは黙々と暗殺の世界に生きる。ユーロポールの科学捜査官ミカ・コレッティ(ナオミ・ハリス)は、世界中で頻発する要人暗殺事件の背後に忍者の一族がいる事を掴み、同僚のライアン・マスロー(ベン・マイルズ)と共に調査を開始する。ミカは暗殺された元KGB局員アレクセイ・サバディンが残した忍者にまつわるレポートを手に入れ、彼が最後に対面したという青年の存在を突き止めるのだ。映画は雷蔵(Rain/ピ)と呼ばれる男を主人公とし、専ら彼の幼少期を回想する。孤児であった彼は役小角(ショー・コスギ)に拾われ、雷蔵と名付けられた。小角の暮らす忍者屋敷はさながら森の中に作られた要塞であり、雷蔵はこの地で他の少年たちと同様に血の滲むような訓練に励む。音や気配がすれば、容赦なく小角の拷問を受け、育った雷蔵はやがて霧子(リン・ダン・ファン)という女忍者と恋に落ちるのだが、2人の運命はとんでもない悲劇が待ち構えていた。

 雷蔵は父の顔を知らず、小角だけを唯一の師(義父)と仰ぐのだが、ウォシャウスキー兄弟はこの小角を家族の掟を守らぬものは女子供であろうと容赦しないミソジニストとして描くのだ。厳しい掟の中で生まれた仄かな恋心と挫折。霧子は雷蔵と「ここではないどこか」を夢想し、屈強な壁の向こうの外の世界へ行こうと彼を誘うのだが、少年の心は強欲な父の支配下で一瞬の過ちを犯すこととなる。何とも暗い生い立ちを背負いし主人公を救うのは、父を越えることと同義で、女子供であろうと容赦しない秘密結社のような忍者組織から女性を守ることが彼の尊厳となる。それにしても映画は冒頭から目を背けたくなるような血しぶきのヴァイオレットな赤に支配される。明らかに鈴木清順の『東京流れ者』やクエンティン・タランティーノの『キル・ビル』以降の映画だが、カーチェイスも交えながら繰り広げられる忍者合戦の様子は壮絶で、まるでジョン・ウーばりのガン・アクションもアクションに加速を付ける。日本人から見れば国友重章の断定的な記述など明らかにおかしい箇所も散見されるが、ショー・コスギのやられっぷりは真に見ものだ。
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