KnightsofOdessa

無警察地帯のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

無警察地帯(1955年製作の映画)
4.5
No.310[異色の"再現ドラマ"ノワール] 90点

カーソンの最高傑作と言われる本作品はスコセッシに影響を与えたギャング映画15本に選出されるほど本家シネフィルの間では有名らしい。スコセッシの映画はそこまで好きじゃないが、彼の選ぶ映画はあまり外さないとこが本家シネフィルって感じがする。

舞台となるアラバマ州フェニックス・シティは1950年代に‟悪の巣窟‟と呼ばれた街で、1954年に実際に起こったアルバート・パターソン射殺事件を下敷きに"ドキュドラマ"形式の映画である。どうしてそこまで堕ちたかというと、近くにあった米軍基地の兵士たちにドラッグやら売春婦やらを提供し金を巻き上げていたかららしい。そんな中地元の正義感溢れる弁護士アルバートが犯罪撲滅運動のリーダーに抜擢されて活動を開始、検事に立候補して不正選挙にも打ち勝つが、当選翌日に暗殺される。これを機に知事は州兵を投入して街の犯罪は一掃された。

映画は当時のフェニックス・シティを知る人々へのインタビューから始まる。記者や警察官、パターソンの未亡人にインタビューしてから突然再現ドラマに移行し、アルバートの息子ジョンが当時の街の状態を語り始める。"まるで映画のよう"な犯罪都市が実際にあるということを示す兵士だらけのキャバレーやカジノシーンなんかは印象的。アルバートはニュルンベルクから帰還する息子夫婦と静かな余生を過ごそうとしていたが、警察すら支配下に置くレット・タナーという男に仕切られた街に帰ってきたジョンは、抗議集会を弾圧する警察を目の当たりにして黒人掃除夫などと協力して通りで市民に迷惑をかけるギャングを叩きのめす。この報復にと黒人の少女が殺害され、遂にアルバートが立ち上がる。このシーンが中々衝撃的で頭から離れない。

結局上記の通りアルバートは凶弾に倒れるのだが、この前後のシーンの緊迫感は素晴らしいと思う。白人のジョンが黒人の掃除夫とペアを組むという発想も先進的である。再現ドラマとは思えない緊張感と突発的な暴力が映画を引き締めている。
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