kane

ニュー・シネマ・パラダイスのkaneのレビュー・感想・評価

3.2
この作品を絶賛できる人に酷く嫉妬してしまう。心底羨ましい。

こういう言い方は本意ではないが、正直な感想を申しますとこの映画は雰囲気映画だと思う。ちゃんと断っておかなければいけないが、決して貶しているというわけではなく、単にそういう作品というだけで、そここそが素晴らしいのだろう。

全体通して表面的でテーマの核心に触れるということはなく、というかテーマを掘り下げるつもりが無いと言った方が正確で、それらしい言葉とそれらしい演出がうまく合わさった結果、叙情的な作品に仕上がっている。
素直に作品の空気感に牽引されれば感動を避けることはできず、逆にあんまり勘ぐって登場人物に対し大それた葛藤を求めながら観ていると肩透かしを食らってしまう。心理描写があるにはあるがそこに特別重点を置いているわけでは無い。

あえて言っておきたいのだが、この映画の、映画好きなら絶対に観るべき!という煽りにはついつい訝しんでしまう。
確かに、監督の映画愛は随所に見受けられるし、鑑賞後、映画っていいなぁという気持ちにはさせてくれる。
だが、物語自体はそこまで映画はあくまでモチーフとして抑えられている。この作品における映画は、ノスタルジーの象徴で、そこからいかに脱却できるか、そして現在もまた過去に葬られていくという無常が本作の主題だと考えている。少なくとも映画を賛美しているのではなく、映画の限界を仄めかしておきながら、でも、やっぱり映画っていいじゃん!という着地の仕方を取っている。謂わば、映画人の願望の現れなのではないだろうか。
そのラストシーンは少々安易な気もするが、音楽の手助けもあって落涙から逃れられない。

そこで評価を決めてしまえば良いものの、僕はどうしても理屈で焼き直しをしたくなってしまう癖があり、結局何てことない話だったと、自ら感動のブレーキを踏んでしまった。名作と言われる所以が分からなくもないため、自身の性格に辟易してしまう。