オレンチ

ニュー・シネマ・パラダイスのオレンチのレビュー・感想・評価

4.8
今も尚、映画好き達の間で不動の名作として輝き続ける『ニューシネマパラダイス』。
この作品に僕のような素人がレビューのようにモノを言うのは本当に恐れ多いのだけれど、(それを言ったら他も同じか笑)
なぜ名作として語り継がれるのか。僕なりの感想を。


◼︎"映画"に感じるノスタルジー

村の唯一の娯楽である映画館パラダイス。人々はその娯楽を求め毎晩のようにパラダイスへ通う。
決して安定した時代ではなく、生きていくことで精一杯だった時代だけれど、映画館のシーンだけは皆が笑顔で幸せがほとばしる。
この作品は"映画"が心の拠り所として描かれているのです。
閉館まで映画館に入れなかった人々のためにアルフレードは外の壁一面に映画を照らし、人々は歓声をあげる。
僕ら映画好き達にとって、こんなにも喜ばしく微笑ましいシーンはなかなか無いでしょう。
そうやって映画が与えてくれる最良の部分を教えてくれている気がします。
これが僕がこの作品を好きな一番の理由。愛すべきものが、敬意を持って大切に扱われているから。

だからこそ、映画が唯一ではなくなってしまった瞬間、ノスタルジーな思いがこみ上げてきて、どうしようもないほどの涙が出てきてしまうのだと僕は思います。


◼︎少年からもらう映画愛

映画愛に対してもこの上なく素敵。
映画に魅せられた少年トトが、フィルムを覗いて見せるあの笑顔。
あの瞬間、あれくらいの歳の少年だからこそ混じりっ気なし純度100%の映画愛が僕を襲う。
何回観ようが、何度でもあの笑顔の虜になってしまうんだ。憧れさえ抱いているかもしれません。
それくらい純粋でパワーを持った映画愛が『ニューシネマパラダイス』にはあると思います。
また、これがセリフではなく感情として入ってくるのでより深く僕の心に刻まれるのです。


◼︎名作と名言

本作は紛れもなくアルフレードとトトの物語。
映画愛もそうだが、恋愛や人生においても隙がありません。
隙を見せないのはアルフレードの数々の名言が一役かっていると思います。
名作だから名言が生まれるのか、名言があるから名作となるのか、どちらが正しいか定かではありませんが、それくらい名作と名言は共存するものです。
この名言があるからこそ作品を深く記憶します。

この中でも僕が一番好きな名言をひとつだけ。

"お前の顔は見たくない、お前の噂を聞きたい byアルフレード"

ここだけ切り取ると何のこっちゃとなる言葉ですが、これはアルフレードがトトに才能を見出し、その才能を積んでしまわぬように大都会へ旅に出ろという思いが込められています。

このセリフでアルフレードのトトに対する想いの深さがとても強く感じられます。
約2時間という枠の中で、ここまで想いの深さを示せる言葉。だからこそ名言と呼ばれるのでしょう。




これらのことから僕は『ニューシネマパラダイス』を愛してやまないのです。

キスシーンのフィルムとともにアルフレードとトトの出会いを感じに、何とも穏やかで爽やかな感動のラストです。